第二十話『修学旅行』

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「写真撮ろうぜー」  二日目も団体行動で観光だ。今回は清水寺である。  皆で名所の観光を続けていると、岩根(いわね)がそう言って久土和(くどわ)の前でスマホを持ち上げる。 (写真……いい…)  岩根(いわね)雨宮(あめみや)が久土和と三人で楽しそうにカメラに収まる瞬間を元音(もとね)は横目で眺めていた。久土和とのツーショット、今こそ撮るべきなのではなかろうか。 「久土和くん!」  三人の撮影が終わったところを見計らって元音は久土和の名を呼ぶ。  彼は笑顔を消す事なくこちらに顔を向けてくると、何だ? と優しい口調で元音の言葉を待ってくれていた。本日も彼の一言一句にときめきが止まらない。 「写真一緒に、撮ってもいい?」  少し緊張した様子で、しかしはっきりとそう尋ねる。久土和は迷う事なく「おう! 撮ろうぜ!」と了承してくれるとそのまま何の躊躇もなく元音の側に近付き、有名な絶景を背景に写真を撮るのであった。 (えへへへ……久土和くんとのツーショ……これ、待ち受けにしたい……)  元音の顔が緩み切ったものへとなっていると、美苗(しえ)可菜良(かなら)に良かったねと声を掛けられ、そのまま三人でもたくさん写真を撮ることになった。  久土和はと言うと、岩根雨宮の二人と共にもう一つ景観の良い方へ足を進めていた。ずっと久土和にくっついて回りたい気持ちは山々なのだが、流石に久土和も男同士で楽しみたい時もあるだろうと、元音は自重する事を学ぶのであった。 第二十話『修学旅行』終                next→第二十一話
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