第二十一話『予定外の元音』

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第二十一話『予定外の元音』

 そうしていよいよ、肝試しの時がやってきた。  元音(もとね)は一番楽しみにしていたと言っても過言ではないこのイベントに朝から気持ちが高鳴っていた。 (久土和(くどわ)くんと二人で夜道っ最高すぎる!!!)  肝試しという行事自体には心躍らないが、久土和との二人きりの時間があるのだと考えると、元音の心は面白いくらい踊り始めている。 「じゃあ男女ペアになってねー」  肝試しの案内を指揮する教師がスピーカーを持ってそう発信をする。その場にいた生徒らはガヤガヤと騒がしさを高め、彼らはどこからともなく動き始めた。  元音も同じように足を動かし、美苗(しえ)可菜良(かなら)に手を振り即久土和の姿を探し始めると、そこで名前を呼ばれる。 「平ちゃん、こっちだぞ」 「!!!」  斜め横側から久土和の声がかかり、元音は彼の姿を見て心から安堵する。  ひょっとしたら誰か他の女に誘われてしまっているかもしれないと少し不安であったのだ。先に約束をしていたのは元音なのでペアが変わる心配はないのだが、誘われている久土和を直視するのは嫌だったのである。  自分の好きな人がモテているという構図は、元音にとっては嬉しいことではなかった。それを誇らしいと言う美苗や可菜良の意見は元音には分からない感情であるからだ。 「久土和くん、良かった。どこにいるか気付かなくて」 「平ちゃんちっこいからな、背高い奴多いし無理もねえよ。くじ引きに行こうぜ!」
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