第二十一話『予定外の元音』

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(ちっこい……ちっこい………良い響き…)  自分の身長は百六十一センチと平均身長で考えればそう小さくはない身長だ。  しかし久土和(くどわ)にとっての元音(もとね)は遥かに小さく、元音の顔が久土和の肩あたりにあるのでそう思われるのも納得の事だった。  元音は彼に小さいと言われた事が嬉しく、小さな笑みを溢す。そのまま肝試しの順番を決めるくじを引きに行くと、二人の番はちょうど半分のところであった。  順番が回ってくるまではこの広い草原のところで待機なのだと説明が入る。 (久土和くんとのお散歩早くしたいな〜)  そんな事を思いながら、ちらりと久土和の方を見る。彼は靴紐が解けたのか、しゃがみ込んで靴紐を結び直していた。そのしゃがみ込んだ姿に、元音は再び心を奪われる。 (抱きつきたい〜大きな背中、最高にかっこいい)  そして元音はただただ忘れていた。自分が本当は、怖いところが大の苦手であるという事を――。
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