第二十二話『あーんを目論む』

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久土和(くどわ)くんっ昨日は本当にありがとう!!!」 「おっ平ちゃん、元気そうで良かったぜ。バイキングだから今日の飯はなんでも選べるってよ」  食堂で久土和の姿を見つけていの一番に彼に昨夜のお礼を告げると、久土和は元音(もとね)の顔を見て満面の笑顔を見せ、そう言ってご飯の話題へと切り替えてきた。  これは意図的ではなく、彼の性格ゆえなのだろう。  元音が昨日の出来事を思い出さないように彼は無意識に話題を変えているのだ。無意識、というところが久土和らしくて本当に魅力的である。 「うんっとってくるね!!」  食堂では班ごとに一つのテーブルについて食事を摂るというルールが定められている。  元音は偶然にも久土和と真向かいの席に座れることになっており、急いで選出した朝食を皿の上に盛り、久土和の元へ足を運ぶ。  テーブル席に戻ってきた元音に気が付いた久土和は楽しそうに元音は朝食に何を選んだのか顔を覗かせてきた。  食べる事が好きだという久土和にとって、元音が何を食べるのか気になるのだろう。  自分が彼の興味の対象に入れている事が喜ばしい。元音に、という点ではなく朝食であれば誰のでも楽しいのだろうが、どんな意図があれ彼が興味を示してくれるのは嬉しかった。これは強がりではなく本心だ。 「さっき焼きたてのパンが出てたからとってきたよ」  テーブルの上にお盆を置きながら元音がそう口に出すと、久土和は目を開かせて嬉しそうに口を開く。 「焼きたてパン出たんか!? 俺もとってくるわ」
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