第二十三話『ハイパーミラクルスペース級急展開』

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* * * (お? なんかいつもの平ちゃんだ)  目の前で倒れている鉄平(てつひら)の瞳は真っ直ぐにこちらを見上げており、その目はキラキラと輝きを放っている。  久土和(くどわ)としては致し方ないとはいえ、大男である自分が彼女の上に跨っているこの状況が鉄平を怖がらせてしまっているのではないかと危惧していた。  だが鉄平はほんの一瞬だけ心配そうにこちらを見上げた後、すぐにこのように目を輝かせ始めていたのだ。無言でこちらを見上げてくる鉄平の視線はいつも自分を慕ってくれる彼女のそれと全く同じだ。 (めっちゃキラキラしてんな……目) 「平ちゃん手、掴まってくれ。自分の力で立てそうか?」  久土和は彼女の瞳にそんな感想を抱きながらも自身の体を起こし、膝をついたまま鉄平に手を差し伸べた。  すると鉄平はうん! と覇気の良い声でこちらの手に小さな指を伸ばしてくる。  彼女の手を掴みグッと持ち上げると、鉄平はバランスを崩すこともなくその場で立ち上がる事が出来ていた。 「どこも痛むところねえか?」 「大丈夫だよっ! 久土和くんが庇ってくれたから! ありがとう!」  念の為確認で彼女の容態を問うてみたが、鉄平は本当に平気そうな明るい顔でそう言葉を返してきた。ホッとした久土和はそのまま彼女に視線を合わせていると、鉄平は頭にクエスチョンマークを浮かべて口を開く。 「久土和くん? どうかした?」  首を傾げて問い掛けてくる鉄平の姿は可愛らしい。彼女の事を可愛いと思うのは今日が初めてというわけではない。しかし、目の前にいる鉄平が可愛らしいと感じ、それを口にした事はなかったような気がする。 「おう、平ちゃん可愛いよなって思ってな!」 「えっ!?!?」  途端、驚いたように真っ赤になる鉄平が目に入った。 「俺の事そんなキラキラな目で見てくっから可愛いって思っちまうよな!」
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