第二十三話『ハイパーミラクルスペース級急展開』

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「……あのよ、怪我、ほんとにしてねえか? 平ちゃんちっこいから気になんだよな」  しかしそこで確かめておきたい事が頭に浮かび、久土和(くどわ)鉄平(てつひら)にそう問い掛けてみる。  鉄平が小柄ゆえに心配していた。彼女がこちらに迷惑をかけまいと気丈を振る舞っているのなら、それは阻止せねばならない。女の子なのだから、何かあったら自分の手で保健室なり病院なり連れて行こうとそう思っての発言だった。 「あっそれはほんと大丈夫だよ!! 久土和くんの腕が全部ガードしてくれてて全く当たってないんだ! むしろ久土和くんこそ大丈夫だった?」  鉄平は再びそう言って元気そうに笑顔を向けてくる。  顔の赤みこそまだ残っているものの笑顔を絶やさない彼女の態度は嬉しいものがあった。 「そうか、良かった! おう、俺も全く問題ねえぞ。ありがとな!」  久土和は鉄平の心配の声にお礼を告げるとそう言って二人で笑い合っていた。  そのまま鉄平が転ぶ要因となっていた一枚の紙を手に取り二人で教室へと戻り始める。  教室に戻るともう生徒は誰も残っておらず、鉄平と久土和の二人しかこの中にはいなかった。  久土和はリュックを片手で背負いながら鉄平の方へ「帰ろうぜ!」と笑みを向ける。今日は部活もない日だったので、自然とそんな誘いを口にしていた。  すると鉄平は足を止めながらこちらを見つめ、こんな言葉を繰り出してきたのである。 「久土和くん、夏休み、デートしてくれませんかっ!?」  顔を火照らせた状態の鉄平はこちらから視線を逸らす事なく、そう言って久土和の反応を待っていた――。 * * * 第二十三話『ハイパーミラクルスーペース級急展開』終               next→第二十四話
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