第二十四話『デート』

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第二十四話『デート』

(言った! 言っちゃった!! 言ったよ〜!!! 言っちゃった!!!! 言った!!!!!)  元音(もとね)は本日達成したくて仕方がなかった誘い文句を、ようやく口に出す。久土和(くどわ)は特に驚いた様子を見せることもなく二つ返事で「おう! 遊ぶか!」と言葉を返してくれていた。 (やったっ!! 嬉しい〜〜〜っ!!! 夏休みデート!!!)  彼の屈託のない笑みと陽気な声で元音のテンションは最高潮へと達している。  先程も久土和と思いもよらぬ床ドンが体験でき、もう嬉しいことが起こりまくっているのだ。過呼吸になってもおかしくないくらい、元音の心は踊り続けていた。勿論、表には出さぬよう抑えているつもりだ。  心中で喜びの舞を踊っている中、久土和は「けどよ、平ちゃんは大丈夫か?」と予想外の台詞を口にしてきた。元音は驚き「え?」と声を漏らす。  そうすると、彼はこちらに向き合いながら説明をしてくれていた。 「俺の中では平ちゃんの望むような関係にはなれねえからさ。それは、平ちゃんにとって辛いんじゃねえのか」  いつもより真剣に彼はそう言ったのだ。 「全然平気!!!」  そして久土和の意図を即座に理解し、元音は迷わず言葉を発していた。  久土和は元音を心配してくれている。そう思えたことが本当に嬉しい。  なんて優しく素敵な王子様なのだろうと、もう本当に幾度実感しても仕切れない程、元音は久土和の心の美しさに気持ちを奪われていた。 「久土和くんと一緒にお出掛けできるっていうのが夢みたいに嬉しいの! 久土和くんが良いなら気にしないでほしいし、わたしは久土和くんと遊びたい!」
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