第二話『行動』

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 友人らの反応は尤もである。今までこの二人の耳にタコができるほど元音(もとね)は理想的な王子様のプレゼンを行なっていたのだ。そんな元音が久土和(くどわ)に目をつけたのだから彼女らが驚くのはよく分かる。  元音は昨日の出来事を分かりやすいように説明しようと再び口を開きかけるが、そこで愛しの王子様――久土和の声が耳に入ってきた。 「オス! 今日は宿題やってきたわ〜」 「クドおはー! 何お前、俺はやってねーのに裏切り者!!!」 「おお、いてて。今日くらいはやっておかねえとな」  彼は普段からよく会話をしている男子生徒達に囲まれ楽しそうに談笑をしている。  そんな久土和の笑顔がキラキラと輝いており、元音は遠く離れた位置からでも彼の眩しさを感じ取って無意識に頬を染め上げていた。  無言で遠くを見つめる元音の姿を目にしたのか、美苗(しえ)が唐突に元音のおでこにペちっと手を当ててくる。 「いたっ」 「おいおーい、ガン見じゃん」 「だってさ、久土和くんが来たから」  そう言いながらチラチラと久土和がいる方向を再度見つめる。今日この瞬間から久土和の一挙一動を見るのが元音にはとてつもなく幸福な事になっていた。
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