第二十四話『デート』

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 そして今日は決戦日である。久土和(くどわ)との待望のデート日だ。 (きゃ〜〜〜っ何着て行こう! 服が決まらなくて楽しい〜〜っっ!)  昨日は一日中何を着て行こうかとファッションショーを繰り返し、何時間経っても服が決まらない元音(もとね)に呆れた母を上手く説得してショーに付き合ってもらいながらなんとか服を決めていた。  時間をかけて決まったデート服は、お気に入りのキャミソールワンピースに夏物のカーディガンを羽織り、足元は歩きやすいサンダルを選出しているスタイルだ。  今日は久土和とゲームセンター内を歩き回る予定なので足手纏いになる靴は除外していた。  待ち合わせは学校の駅から数駅で到着する種類駅という有名な駅だ。土日は特に賑わう大きな駅であり、交通の便もとても豊富である。元音の家からは三十分程度で到着する所だった。 (幸せすぎる〜〜〜っ)  約束の時間の一時間前に到着するよう逆算していた元音は時間になると急いで自宅を後にする。  自宅を出てから駅まで小走りで向かい、電車に乗り込むとゆっくりペットボトルの水を喉に流し込んだ。  久土和と完全なる二人っきりのデートを前に元音の頭の中は妄想でいっぱいだ。早く彼に会いたい気持ちを落ち着かせながら電車が種類駅に到着するのを待つ。 (久土和くん、ギリギリ遅刻かな、それとも三十分くらい寝坊かな〜どっちでも可愛いっ)  久土和が遅刻しても元音にとってはなんら問題がない。彼の妄想に時間を費やす事で待つことは全く苦にならないからだ。  そして久土和は元々学校にもギリギリ遅刻するかしないかのタイミングで登校することがほとんどの為、彼の性格を予め知っている元音としては遅れる事は彼の魅力の一つにさえ思えていた。 (遅刻の王子様もいいよね〜っふふっ久土和くん、何時に来るかな)  待ち合わせの時間は朝の十時だ。元音は九時に駅に到着するよう計算をしており、その理由はただ早く到着しておきたかったからだった。 (久土和くん……今日、デートできるんだあ)  種類駅に到着し、待ち合わせとしてよく利用されている三種類の噴水広場の中央で彼を待つ。  季節は真夏であるものの、今日の気候は汗が出ない過ごしやすい気温だ。そのため元音は屋外で彼を待つ事にしていた。  元音は改めて彼とデートができるのだと実感していると深く深呼吸をして久土和との妄想にふけ始めていく。
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