第二十四話『デート』

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 そう、実は元音(もとね)久土和(くどわ)との間接キスが箸越しに達成できるのかと多少、いやかなり期待はしていた。  そのため彼の行動から目が全く離せなかったのだが、久土和の行動は元音の想像の斜め上をいき、しかしその行動に元音は幸せを感じていたのだ。  久土和は口をつけていない逆さにした方の割り箸でまだ手をつけていないたこ焼きを掴む。  逆さにした箸と言っても、手が触れていない部分で器用にたこ焼きを掴む姿勢を見せてくれる久土和の姿を見てこちらを気遣ってくれているのが伝わってくる。  そんな彼の姿に最高に気遣いのできる王子様を感じていた。  そして元音の皿に一個のたこ焼きを置くと「じゃあ明太マヨ一個もらうな!」と眩すぎる笑顔を見せながら嬉しそうにたこ焼きを一個、攫っていく。  元音はドキドキしながら彼の一言一句に神経を集中させ「こちらこそありがとうっ」と声を発して彼から渡されたたこ焼きを頬張るのだった。 (久土和くんの逆さの箸で掴まれたたこ焼き……っ)  久土和に渡されたたこ焼きが世界で一番美味しく感じられる。  大袈裟に聞こえるであろうこの感想もだが元音にとっては大真面目な意見であった。そして幸せな昼食は約四十分で終了していた。
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