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駅に向かう途中、彼はそんな事を言ってくれる。嬉しすぎるご褒美のようなこの言葉に元音の心臓は簡単に、あまりにも容易にうるさくなってしまう。
本当に久土和という一人の王子様に元音は容易く気持ちを動かされてしまうのだ。
そして元音は緊張しながらも己の心中を急に彼へ伝えたくなっていた。
「あのね、久土和くん」
「お、なんだ?」
久土和は変わらず楽しそうな笑顔で元音に聞き返す。
「夏休み会えなくてもわたしの王子様はずっと久土和くんだけだからねっわたし、久土和くんの事ずっと好きだからっ」
そう告白をすると、元音は言い逃げになる形でそのまま駆け出した。
久土和と一緒に途中の駅まで帰るつもりだったのに、勢いで足が動いてしまっていた。これは自分でも予想外な行動であり、自分自身で驚いていたが、足を止める事はできず駅に向けて足を走らせる。しかし――――
「すまん平ちゃん、一旦止まってくれ」
普通に久土和に追い付かれていた。
久土和はいつの間にか自身の手の平を両方こちらに向けながら元音の前に立ちはだかり、元音の進む先を阻止している。元音は驚いたまま口を開いていた。
「エッ!?!?!? な、なんで…おいかけて!?」
頭が混乱しかけたまま元音はそう問い掛ける。正直、緊張と驚きと息切れで頭が真っ白になっており、何が起こっているのか理解が及んでいなかった。
そうすると久土和は至って普通の態度でこんな言葉を口にしてきたのである。
「いや家まで送ろうと思ったんだけどよ、迷惑だったりするか?」
「えっ! ……!!? いや、その……一緒に帰りたい…ナ」
「おう! 帰ろうぜ!」
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