21人が本棚に入れています
本棚に追加
そうして久土和とそのまま電車に乗る事が確定していた。
(家までってわたしの最寄り駅まで来てくれて、家の前まで送り届けてくれるって事で合ってる……っ!? すご過ぎないっ!?!?)
元音の頭の中は忙しく、もう先ほどまでの羞恥心は消え去り、久土和に送ってもらえることばかりを考え始めている。
自分でもおかしな人間だと思うが、幸福な展開に気持ちが高まっていた。
久土和の紳士力にときめきが噴火しながらも、電車の中で器用に会話を続ける。
久土和からは特に気まずい雰囲気を放たれることは一切なく、彼は楽しそうに尽きない話題を提供してくれている。
すると久土和はとある駅に電車が止まったところでこんな事を口にしてきた。
「さっき嬉しいこと言ってくれただろ、ありがとな」
(えっ)
他愛のない話をしていたはずだったのだが、久土和は突然先程の話を再び話題にしてきていた。元音は驚きながらも心臓の鼓動が幸福すぎて限界を迎えそうになり、しかし彼の言葉に耳を傾ける。
「確かに部活があるけどよ、四六時中やってるわけじゃねえから時間はあるんだよな」
(えっっ)
久土和はゆっくり声を発しながら元音の心臓を跳ね上がらせる台詞を繰り出していく。
「だからさ、平ちゃん」
(えっっっ)
元音の名を口に出すと、久土和はこちらに笑顔を向け、口にしたのだ。
「夏休みは連絡とったりよ、なんか色々しようぜ!」
(なっなんか色々っ!?!?!?)
もわわーんとあらぬ事を妄想した元音は、予想外に現れた美苗に軽いチョップをされて現実に戻される。
そして久土和を見つめ返すと彼は楽しそうに笑いながら「いつもマジでサンキュな! 平ちゃんと遊ぶの楽しかったわ!」と言って録音したくなるほどの嬉しい言葉を向けてくれるのであった。
最初のコメントを投稿しよう!