第二十五話『運命の再会』

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第二十五話『運命の再会』

 そうして夏休みが終わった。  元音(もとね)はあれ以来一度も久土和(くどわ)に会う事が出来ていなかったが、彼は言葉通りに連絡をいつも送り返してくれていたのだ。  まるで遠距離カップルのような雰囲気を味わえていた元音は彼との新学期妄想を毎日飽きもせず更新し続け、夏休みを謳歌していた。  途中途中で美苗(しえ)可菜良(かなら)、そして(あん)友梨(ゆり)ともそれぞれ遊びに出かけたり、時には宿題を一緒に行い、夏祭りに出かけ、海やプールに行くなど夏らしい遊びもたくさんしていた。  もちろん遊びに出掛けた際には恋バナも欠かさずしており、彼女らの恋人やいい感じの相手との胸がときめくエピソードにキュンとしたり、逆に元音の嬉しかった久土和とのエピソードをもういいと言われるまで延々と語り尽くしたりもしていた。  そんな楽しい夏休みの最終日が終わっても、長期休暇の終了に寂しい思いは一切持たず元音は楽しい思いだけで翌日の新学期を迎えているのであった。 (去年までは夏休み終わるのすごく嫌だったなあ)  そんな事を思いながら制服を着用し、身支度を整える。 「元音、今月の小遣いやるから出る前に声掛けなさい」 「はあい」  扉越しに聞こえる父の声にそう返事を返しながら、元音はレインに目を向ける。  久土和とは昨日の夜もレインを交わしており、彼とのやり取りは元音のメッセージで途切れたままだ。  きっといつものように寝落ちしたのだろうと想像できるが、彼から返事が朝に来るかもしれないと少し期待をしている。  久土和が寝落ちした時は、その翌朝に返事が返ってくる時と来ない時で五分五分なのである。返事が返ってくると嬉しい事この上ないが、しかし絶対的に返事を期待しているわけではない。  彼の無理ない範囲で対応してくれる姿勢が好きだからだ。付き合っているわけでもないのだから当然であろう。  それに、もし付き合っていたとしても久土和に無理はしてほしくない。彼が返そうと思ったタイミングで返事を返してくれる事が元音にとっての幸福なのである。 (既読になってないからまだ寝てるのかな……えへへ)  寝坊助な久土和を具体的に想像しながら元音の口元は緩む。  そうして靴下を履き終えると鞄を手に取り、用を済ませて家を出るのであった。
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