第二十五話『運命の再会』

2/8
前へ
/251ページ
次へ
「あっ、もっちゃんリボン忘れてんじゃん」 「わっほんとだ!!」  学校に到着すると、下駄箱で偶然出会した空名(くな)にそう指摘される。全く気が付かなかった元音(もとね)は彼女の言葉で初めて制服のリボンを付け忘れた事に気が付いたのだ。 「朝は妄想しかしてなかったからっえへへ、まあなくても困るものじゃないし」 「また久土和(くどわ)妄想? 楽しそうだね」 「当たり前だよ〜っ空名だってゲームの事考える時間は最高にテンション上がるでしょ」 「こりゃ一本取られたーうちら似たようなもんよね」  そんな話をして盛り上がった二人はそのまま一緒に教室へと向かっていく。  空名は夏休みの間ずっと引きこもり、ゲーム三昧な日々を送っていたようだ。流石に健康状態が心配であるが、彼女は手を振りながら「ご飯買いに行ったり散歩はしてるよーまあ運動って感じではないけど」と笑って言うのである。  空名とは夏休みの間一度も連絡を取っていない。彼女は本当にゲームを愛しており、私生活で交流することはほとんどないのだと本人がよく口にしている。 「早死にしないでね、ちゃんと運動もしてよー?」 「あははっもっちゃんオカンか!」  元音も人のことを言えるほど運動はしていないが、彼女よりは外に出ている自信がある。  その為彼女を案じる言葉を口にすると、空名は笑いながらそう返してくるのであった。  そうして談笑を交わしながら教室内に入ると、元音の目は瞬時に輝き始める。なんと今日は王子様である久土和が元音より先に教室に来ていたからだ――。 「久土和くんっ! おはよっ」 「平ちゃんおっす! 久しぶりだな!」 (きゃ〜〜〜〜〜っ!!!!! 運命の再会っ)  久土和の陽気なオーラに一瞬で心が洗われた元音は幸せな思いで教室を歩いていく。  すれ違い様に「今日も好き!」と彼に思いをぶつければ、久土和は嬉しそうに笑ってありがとな! と声を返してくれるのである。二学期が始まったのだと、そう実感できた瞬間であった。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加