21人が本棚に入れています
本棚に追加
第二十六話『お呼びでないライバル』
「おはよーっ」
いつものように登校をする。
今日から授業が本格的に開始される為、元音は自身で用意したお弁当をカバンに詰め、登校をしていた。
「もっちゃんおはよ〜!」
教室に入ると数人の生徒が挨拶を返してくれ、席に座っていた空名も口元を緩めて挨拶をしてくれる。恒例的な挨拶が終わればあとは席に着くだけだ。
(久土和くんはまだ登校してない……ふふっギリギリかな)
そんな事を考えて一人で楽しんでいると、可菜良と美苗が元音の席まで足を運び、いつもの談笑タイムが始まる。
何気ない会話を続けながら楽しいひと時を過ごしていると、突然「鉄平先輩」と元音の名前を呼ぶ聞き慣れない声が教室に響いた。
(?)
朝の教室はクラスメイトらの声で騒がしく、余程のことがない限り止む事はない。それゆえ一人の声が通る事もそうないのだが、彼女の声は騒がしい教室内でもよく通り、元音の耳に届いていた。
「元音、知り合い?」
「後輩ちゃん?」
教室の扉の前でこちらの名前を呼んだ女子生徒は見た事がない女の子だった。
元音よりも背の小さいその子は控えめに言ってもとても小柄で可愛らしい容姿をしている。一体何の用だろうと元音は美苗と可菜良に声を掛けてから席を立ち、その子の方へ足を進めた。
「わたしでいいんだよね?」
念の為確認をすると彼女はコクンと頷き、廊下の方へ来てほしいと言葉を発する。
そのまま彼女に続いて廊下へ出ると、行き止まりの方で話をする事になっていた。
「あの、私雲園小世々と言います。鉄平先輩には言いたい事があって来ました」
(言いたい事?)
最初のコメントを投稿しよう!