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(言いたい事?)
初対面の雲園が何を言おうとしているのか、元音には全く見当もつかなかった。
疑問が続く中、彼女の言葉を待つ。するとふわふわな髪をツインで結び、腰あたりまで伸ばした彼女は元音を真っ直ぐ見据え、驚く言葉を口にしたのだ。
「久土和先輩の事狙ってますよね? 私も同じなので! 絶対負けません!!」
(な、なんだって!?!?!?)
衝撃で元音は目を見開き、言葉を失う。
そして恐ろしい想像が実現してしまった事に元音の気持ちは激しく動揺を見せた。しかしそんな元音を置いて雲園は再び言葉を続けてくる。
「私の方がちっちゃくて可愛いから、久土和先輩には私がふさわしいです! 身長差最高カップルになるんで!!」
(な、な、なにこの子〜〜〜!!!!!! ヤダヤダヤダ!!!)
臆する事なく宣戦布告してきた目の前の女の子に元音は強烈な感情を抱き始める。
「先輩は好きってもう言っちゃってるんですよね? 私はここぞって時に言いますから! 先輩は先走りすぎなんですよ! 負けませんので!」
(ええ〜〜〜やだやだ!! 強敵ライバルとかほんといらないのに!!!)
そんなことを思いながらマシンガンのように放たれるライバルの発言に元音は言葉を返せずにいた。
雲園は言いたい事を言い切ったのか「それでは」と言い、元音の前からあっという間に姿を消す。予鈴の音が鳴るまで我に帰れずにいた元音は、しかし久土和の顔を思い浮かべ急いで教室へと戻り始める。
(久土和くんっ)
教室に到着すると、久土和の姿がそこにあった。
つい先ほど着いたばかりなのだろう、リュックを机に置きながら楽しそうに友人らと談笑をしている。
いつも通りの彼の姿に気持ちが高鳴りながらも元音は雲園の存在を忘れきれなかった。これは、悠長にしてはいられない。そう確信していた。
(あの子……本気だ)
まだつい数分前に会ったばかりの彼女の事を強力なライバルだとそう確信づけていた。
あの女の子は、本気で久土和を好いており元音というライバルを倒して彼と結ばれてみせるのだという揺るぎない感情がこちらに伝わって来たのだ。
しかしそうはさせない。させたくない。絶対に――――
(久土和くんに好きになってもらうのはわたしがいいっ!!!!!)
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