第二十六話『お呼びでないライバル』

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 好きな人がモテる――。  それは元音(もとね)にとって障害の一つでしかない。  自身の想い人がモテている事が誇らしいという美苗(しえ)可菜良(かなら)の意見に同意できた事は一度もなかった。好きな人を好きでいるのは自分だけじゃないと嫌だ。それが元音の本音だ。理由は単純に不安だからである。  好きな人がモテてしまっては気持ちが落ち着かず精神的に耐えられそうにない。  勿論、人間として好かれているのは喜ばしいことだ。  好きになった相手であれば人気度は重要ではないが、好かれている事は素直に嬉しい事だと思う。  だがそれが人間としてではなく異性としてに変わっては困るのであった。故に久土和(くどわ)にモテてほしいとは一切思わないのである。  だからこそ、ライバルが現れた事は元音にとって大きな障害となっていた。  雲園小世々。元音を先輩と呼んでいたことから一年生だろう。  なぜ久土和を好きになったのか、いつから彼を意識するようになったのかは不明だが、とにかく彼女は全力で久土和にアピールをしてくるのだろうと容易に想像ができる。  彼女の邪魔をするのではなく、元音は元音で久土和にアピールを続けようという気持ちではあるが、それでも久土和が雲園に惹かれてしまったらと思うと気持ちを落ち着かせることはできなかった。
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