第二十六話『お呼びでないライバル』

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(辛い……)  帰り際、元音(もとね)は駅のホームでうなだれていた。  あのまま斉藤(さいとう)達と別れ、久土和(くどわ)ともタイミングが合わず結局今回はほとんど彼と接点を作れていない。雲園(くもぞの)への警戒が強まっただけであった。元音は気持ちが沈んでいくのを実感しながら電車に乗り込む。  警戒心はこの先も間違いなく続いていくだろう。  それならいっその事自分もマネージャーになり、雲園の行動を監視しようかという手もあるのだが、やはり元音にマネージャーになろうという気持ちはなかった。動機が不純すぎる上にそもそも柔道部のマネージャーを務める自信はないからである。 (流石に三日間連続で見学はおかしいよね)  別に周囲に何と思われても構わないのだが、顧問である教師に控えてくれと言われては困ってしまう。  元音は小さく息を吐くとそのまま電車に揺られて自宅へ帰るのであった。
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