第二十六話『お呼びでないライバル』

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久土和(くどわ)くんおはよっ今日体育の授業あるからやったねっ!』  昨日は気持ちが沈んではいたものの久土和への連絡は欠かさず送っていた。  そしていつものように久土和の方からもすぐにレスポンスが返ってきており、その後すぐにレインでのやり取りが数回行われていた。  雲園(くもぞの)の一件があったものの、久土和とこうしてレインを送り合えることは元音(もとね)にとって最高に至福の時間であり、気持ちは高揚していた。その日は雲園の事はすっかり忘れ、それから久土和への妄想タイムを続けて就寝したのであった。  そうして翌日になり、久土和へ朝一番となるレインを送る。既読がつかないため彼はまだ寝ているようだ。よくあるパターンに元音の心は和んでいく。 (ふふっ遅起き王子様……好き)  電車の中で久土和の写真を眺め始めた元音は、彼のカメラ目線の写真に気分が上がっていく。  不安な気持ちはあっても久土和を諦めたいとは思わない。久土和が雲園と付き合っている訳ではないのだ。それに、多分元音は久土和に恋人ができたとしてもきっと彼を諦めることなどできないだろう。  略奪をするつもりはないが、久土和がその恋人と別れるまで静かに時を待つ、という選択肢は元音の中にある。  たとえそれがどれだけの時をかけることになろうとも元音の意志は固く決まっていた。だから今雲園という強敵が現れても元音のやるべきことはこれまでと同様だ。 (今日も久土和くんとお話ししようっ)  元音は満員電車に揺られながらそう決意すると、早足で学校に向かうのであった。
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