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今日はまだ一度も久土和と会話が出来ていない。そもそも彼と普段話す事はなかったため、それが当然の事でもあるのだが元音はどうしても久土和と話をしたくて仕方がなかった。
連絡先を知りたいというのもあるが、それを抜きにしたとしても彼とのコミュニケーションはできれば毎日取っていきたい。
(久土和くんを呼び止めよう)
既に放課後を迎えていたが、元音はデートがあると迅速に帰っていった友人からのエールを背負いながら久土和の方まで足を運んだ。一番話し掛けやすい状況である久土和が一人になった瞬間が訪れたからだ。
クラスにはまだ人がちらほらいたが、久土和は一人でリュックの中をゴソゴソと漁っており手を動かしていた。
「久土和くん」
「お? 鉄平じゃねえか」
元音が彼に近付き、声を掛けると久土和は一瞬の間も無くすぐにこちらに視線を向けて「何か用か?」と明るい笑顔を向けてくる。その笑みが眩しく、元音はドキンと本日何度目か分からないときめきを実感していた。
「あ、あのさ……レイン交換しない?」
平常心を保ちながら元音は単刀直入にそう切り出す。
すると久土和はまたも少しの間を置く事無く「おう! いいぜ!」と答えてニカッと笑ってくれるのだった。
「ありがと!!! あのさ、いつもレインって結構するの? わたし友達とめっちゃする方で、久土和くんにも送っていい?」
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