第二十七話『特別』

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 今すぐ暴れ出したい衝動に駆られながらも、そんなはしたない事は流石の元音(もとね)でもできる筈がなく、話がどんどん進んでいく二人の夕食会に絶望しながら元音は二人の姿を見つめる。  すると雲園(くもぞの)は更に元音を絶望に撃ち落とす最悪の言葉を口にしたのだ。 「あっ! 今日は二人きりでお願いしますね! 他の方とは、また別の時で! 人数が多いとご飯来るの遅いイメージあって」  元音には嘘にしか思えない雲園の二人きりへの誘い出し方は、しかし久土和(くどわ)には通用したようで彼は楽しそうに笑いながらこんな言葉を返してくる。 「ははっおもしれえ考え方すんだなー! 雲園がそう言うならそうするか!」 (ヤダヤダだめ!!!!!)  これで二人きりの夕食は確定してしまった。 (やだー!!!!!!! ダメダメダメダメ!!!!! 誰か加わって!!!!!)  だがそんな心中の元音とは正反対に雲園は嬉しそうに喜んでおり「じゃあ終礼先に行ってますね〜!」と言いながら世の男は愛らしいと感じるのであろう可憐な笑みを久土和に向けて体育館を後にしようとする。  しかし雲園はそこで元音と目が合うと、ニヤリとしたり顔を向けてきた。これは、ライバル特有の不適な笑みである。  そうして満足したのか雲園はそのまま体育館を出ていく。
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