21人が本棚に入れています
本棚に追加
『ご飯食べに行かないでほしいっ』
『お願い、女の子と二人きりは避けてっ』
『わたしも参加したいっ』
数々の感情が渦巻く中、これらの言葉を口に出すべきではないと自分でも分かっていた。
ご飯を食べに行かないで欲しいだなんて、元音が久土和に言う権利はどこにもない。
彼女でもなんでもない元音が女と二人で出掛けないで欲しいなどと久土和の行動を制限する資格もどこにもない。
自分も夕食会に参加したいと、そう言えば久土和は二つ返事で了承してくれそうな気はするのだが、それは元音の選択肢になかった。
もし三人で行動したのならば、自身の感情を隠す事が下手な元音はきっと雲園への敵意を隠し切る事ができないだろう。それを久土和に見られるのは嫌なのだ。
だから二人の夕食会に同行する道は最初から元音の選択肢から除外されていた。
(久土和くんが女の子とデート……)
その場で動けなくなった元音は一時離脱していた斉藤に声を掛けられようやく我に返る。斉藤が不思議そうな顔でこちらを見ているところで、久土和が元音の名を呼ぶ声が耳に響いた。
「おーい平ちゃん!」
「!!」
最初のコメントを投稿しよう!