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待っている時間は億劫であり、暇つぶしのゲームは全く頭に入ってきていなかった。今久土和と雲園は何を話して何をしているのだろう。
そう考えていると心臓が悪い意味でバクバクと波打ち、胸が苦しさを訴えてくる。
こんなにもライバルの存在は恐ろしいものだったのだと、今身を持って痛感させられていた。
泣きそうになる感情を必死で抑えながら唇を噛み締め、耐える。自分が今どれだけ愚かで惨めな事をしているのか、理解しながらもこのまま家に帰る事だけはしたくなかった。
数十分が経過し、バレないように慎重に行動をしようと、そう思いながら尾行を続けていた元音だったのだが、しかしこの後すぐに驚愕する展開が元音を待っていた。
(あ………………)
そう、牛丼屋の側で待機していた元音はいつの間にか店から出てきていた久土和や雲園と目が合うまで、自分の姿を見られてしまった事に気付けなかったのだ。
「平ちゃん」
目が合った久土和はすぐに声を向けてくる。だが正反対に、彼の隣にいる雲園は察しがついたのか顔を青ざめさせながら元音を見返していた。
(ドン引きしてる。まあそりゃそうだよね)
彼女は絶句したまま元音を化け物でも見るかのような目で見ているだけだった。けれど雲園の態度は最もだ。
一般的に見て元音の行動はどう見ても異常だ。ゆえに雲園のように尾行を察してこちらを奇怪な目で見てくる事は何もおかしな事ではなかった。当然の反応だと、元音はそう思っている。しかし――――
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