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久土和の言葉を心中で反芻する間もなく久土和は第二の言葉を繰り出してくる。
「平ちゃんは特別なんだ。別に誰でもいいって訳じゃねえけどな、ここにいる平ちゃんに限っては気にならねえ」
(特別……)
もう何が起きているのか分からなかった。
告白以上に喜ばしい言葉を今、自分はこの大好きな王子様に目の前でもらっているのだ。元音は久土和を無言のまま見つめ、その眩しい存在に何度と分からない恋心を改めて強く抱いた。
久土和の言葉は嘘でもなんでもない。彼が嘘をつくことは天地がひっくり返ってもあり得ない事だろう。
「な、こんな事しても……許しちゃうんですか」
久土和の台詞に雲園は声を震わせながら口を開く。先程まで元音の行動を咎めていた彼女の様子とは思えない程、今の雲園の声には力がないように見受けられる。
雲園の反応は正しいものだ。だがそれは久土和にだけは意味を為さなかったのである。
「雲園の言ってる事は間違っちゃいねえからそこは自信持てよ! 俺がいいってだけだ。心配してくれてありがとな!」
肩を落として覇気をなくした雲園に久土和はそう言って明るい言葉をかけた。雲園の常識は間違ってはいないのだと、ただ自分がそうなだけなのだと彼は優しい補足を彼女に話している。
その優しい対応に元音は感激しながら久土和を見つめ続けていると、ようやく彼と目が合った。
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