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「平ちゃん、だんまりなんてらしくねえじゃねえか! 大丈夫か?」
そう言って元音の頭に手をポンと置いてくれる久土和の言動に元音は涙が出そうなほど感動していた。胸が震える。彼の言葉一つ一つがあまりにも贈り物のように優しくて、嬉しくて何があっても乗り越えられそうなエネルギーが自身の心中から駆け巡ってくるのだ。
そうしてから元音はそこでようやく言うべき言葉を口に出す。
「えへへ、久土和くんありがとう。二人共ごめんなさい」
「……」
「雲園には怖い思いさせちまったか? そこはほんとすまんな」
すると元音に連なって久土和まで雲園に謝罪をしてくれていた。彼が謝る必要など何一つないと言うのに、女の子を思いやる気持ちが百点満点である。
「雲園さん、怖い思いさせてごめんね」
元音は改めて彼女に謝罪をする。
雲園に嫌われようが問題はないのだが、それでも彼女を怖がらせていたのなら謝るべきだとそう思っての言葉だった。
ライバルであれど謝罪の気持ちにはきちんと心を込めていた。怖い思いをさせてしまった事に関して反省しているのは本当だったからだ。久土和を優先して動いていた元音は相手が怖がるという事にまで頭が回っていなかった。その結果がこれだ。
すると雲園は久土和と元音二人の言葉に対し口を開く。
「私は絶対おかしいと思いますけど……久土和先輩がいいなら、いいです……」
「雲園サンキューな!」
雲園の口調は先程のようにまだ不信感を持ったものであったが、それでもそれ以上こちらを責めることはなかった。
そして久土和はそんな雲園にありがとうと言葉を向け、彼女はそれに満更でもない様子だ。そんな雲園の顔が仄かに赤くなっている事に元音だけが気付いていた。
「じゃあ今から三人で飯行くか! 雲園もまだ食えるか?」
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