第二十七話『特別』

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 トイレに入った瞬間、雲園(くもぞの)は口を切ってくる。 「先トイレいい?」  話が長引いてはトイレのタイミングを逃してしまう。雲園はトイレに行きたくて席を立った訳ではないのだろうが、元音(もとね)は違うのだ。  雲園は元音の言葉に一瞬言葉を詰まらせたものの、はいと声を発し先にトイレを済ませる事になった。 「それでどうしたの?」  互いにトイレを済ませると、元音は手を洗いながら雲園に問い掛ける。自動で流れてくる水が止まると、そのままハンカチをポケットから取り出して手を拭い始めた。そのタイミングで雲園は再び口を開き始める。 「久土和(くどわ)先輩の事、私諦めてませんので」  すると雲園はそう言って元音を真正面から見据えてきた。先程の一件で雲園が久土和の事を諦めると、そう元音が思うと彼女は考えたのだろう。だが雲園の反応は予想通りだ。  元音は動揺する事なくうんと言って頭を縦に振る。しかしその後、予想外の言葉が元音を待っていた。 「でも以前話した事は撤回します。私、告白します」 「…えっ!!?」  瞬間、心臓が飛び上がった。告白? 今雲園は告白すると言ったのか? 「なんで!!?!?」
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