第二十八話『ライバルからの報告と…』

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第二十八話『ライバルからの報告と…』

(今日だよね……尾行したい…)  あの日、雲園(くもぞの)元音(もとね)に宣言した通り本当に元音のいる前で久土和(くどわ)に遊びの約束を取り付けると、彼は二つ返事で迷う事なく了承していた。  久土和は雲園の好意に気付いているのか分からないが、それでも元音が彼を誘った時のように久土和は一切嫌な顔ひとつせず雲園の誘いに乗ったのだ。当然ながら二人のデートにショックを感じずにはいられない。  尾行したい気持ちが強まっている元音はしかしそれを必死に抑え、先日の出来事を思い返す。 『平ちゃんも一緒にどうだ?』 『久土和先輩、二人がいいんです。鉄平先輩と三人も楽しそうですけど、今回は二人で』 『そうなのか? それはいいけどよ、声かけた後になしは悪いだろ』  そんな気遣いのスペシャリストのような王子様っぷりを見せてくれた久土和にときめきを覚える元音だったが、しかし元音は泣く泣く首を振って彼からのお誘いを断るのだった。  今回のデートに関して邪魔をしないと言った手前、二人の間に割って入る事は出来なかった。  そして久土和がこちらを誘ってくれた事はとてもとても嬉しかったのだが、行けない事実の悲しさの方が今は勝ってしまっている。  元音は二人が楽しそうにデートに行く想像をするだけで頭が痛くなってきていた。考えない方がいいのは確かだが、考えずにはいられない。  耐えきれなかった元音はそのまま美苗(しえ)可菜良(かなら)にレインを送り、相談に乗ってもらいながらもやはりどこかで二人のデートに頭が働いてしまうのであった。
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