第二十八話『ライバルからの報告と…』

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「どうだったの?」  月曜日、終始気持ちが落ち着かない状態で元音(もとね)は下駄箱に向かっていた。二年ではなく一年の下駄箱だ。言わずもがな雲園(くもぞの)を待つ為である。  そして数十分待ったところで元音はようやく雲園と対面することができていたのだ。元音の姿を視界に入れた雲園は心底驚いた様子で口を開く。 「あの、待ち伏せとか怖いです」 「焦らしたのはそっちでしょ、気になって寝れなかったし」 「隈すごいですもんね」 「おかげさまでね」  そう皮肉を込めて返すと雲園は困ったような顔をしながら「こっち来て下さい」と言って元音を裏庭に連れ出した。朝礼までまだ時間が残っている。  裏庭に到着すると雲園は切り出しにくそうに口を開いた。 「ほんと言いたくないんですけどフラれました」 「えっ」  安心感と共に元音は驚いた。こんなに可愛い雲園ならもしかしたらと思ってしまっていたのだ。久土和(くどわ)は雲園の告白を断ってくれたのか。 「鉄平先輩もどうなったのか気になってたんでしょうけど、私も事実を認めたくなくて話したくなかったの、少しは察して下さい」 「だからって雲園さんもまだ好きなんでしょ? わたしとはライバル続行じゃん」 「…………」 「?」  雲園ほどのライバルなら久土和に振られたからと言って簡単には諦めないだろう。そんなことは口に出さなくても分かっている。  まあ諦めてくれたらどれだけ嬉しい事だろうとは思うのだが、雲園が一度の告白で久土和を諦めるとは到底思えなかった。だが雲園は無言になったまま元音の言葉に返事を返してこない。まさか、諦めるのだろうか?
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