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元音は鞄を手にしたまま雲園のいる教室へやってきていた。
休み時間の教室は元音のクラスと大差無いほどに騒がしく雑音が奏でられている。
教室の中にいる雲園を見つけ、元音が彼女の名を呼ぶと雲園はギョッとした様子でこちらに焦点を合わせ、元音の方まで歩いてきた。そうして棘のある言葉を口にする。
「なんですか? 気休めの言葉でもかけにきたんです?」
「いや、慰めようとか一ミリも思ってないよ」
元音は続けて言葉を発する。
「だってライバルだし。わたし敵とは馴れ合わないから」
雲園はその返しに眉根を顰め、苛立った様子を露骨に見せながら「じゃあ何ですか!」と声を荒げた。そんな彼女の乱雑な問い掛けに元音は臆する事なく本題を繰り出す。
「久土和くんの貞操を確認したくて」
「はっ!!? いきなり手を出すとでも!?」
雲園は元音の言葉にさらに表情を歪めた。そうして声の調子を落とすこともせずこちらを睨みつけてきた。
「そんなことしませんけど!! せいぜい腕組むくらいですから!!! ビッチみたいに言わないでください!!!」
「腕組んだのっ!?!??」
「何でそんなとこも気にするんですか! ほんとおかしいですよ先輩!」
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