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雲園の聞き捨てならぬ言葉に元音は食い付く。
しかし雲園はそんな元音を青ざめた目で見ながらそう言って非難してきた。だが元音も引き下がるわけにはいかない。腕を組んだと言うのならば、その事実は本当なのか確認しなければ気が済まなかった。
「腕組んだのかどうかはっきり教えてっ気になって仕方ないから!!」
雲園はおかしい、気色悪い、頭どうかしてると様々な暴言をこちらに向けてくるが、正直そんな言葉はどうでも良かった。元音が今気になっているのは、雲園があの日、久土和に何かしたのかどうかという一点のみなのである。自分の悪口など、勝手にしてくれ。
元音が雲園の腕を掴んで彼女の言葉を待っていると、雲園は観念したのか嫌そうに「手を繋いだだけです」と口にした。
「はっ……!? 手を…繋いだ!!?」
元音はショックで卒倒しそうだった。いや、何とか持ち堪えたのだがあまりにも衝撃的で視界が一瞬暗くなる。
「はあ……勝手に想像してくれるのはいいですけど、もうライバルでも何でも無いので教えてあげます」
雲園は元音の明らかに動揺した様子を見て深いため息をつくと、頭を抱えながらもう一度口を開く。
「手を繋ごうとして私が手を繋ぎました。でも久土和先輩はそれを拒否しました。それだけです。手を繋いだ時間はわずか二秒ってとこです」
手を繋ごうとしたのはデートした日のお昼頃でまだ告白前だったようだ。その言葉を聞いて元音は安心する。まあ、手を繋いだことはやはりショックであるが。
だがしかし、やはり面白くないので雲園に付き合う前から手を繋ぐなんて非常識だと無鉄砲な言葉を向けると、何言ってんですか? と呆れたように彼女は声を放つ。
「久土和先輩だって元カノがいたんでしょう? 元カノとは手繋ぎ以上の事をしてるって先輩でも分かるでしょうに」
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