第二十八話『ライバルからの報告と…』

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「うーんそれはまあわたしが好きになる前だし、どうしようもない事だから」  勿論嬉しいと思えるような内容ではない。だが久土和(くどわ)だって人間だ。  そのような過去があっても何もおかしくはないし、元カノである捺実(なつみ)とは本当に復縁の可能性もなかった為、元音(もとね)の中ではもうしっかりと整理がついているのだ。 「もしかしたら私が久土和先輩と付き合ってたかもしれないんですよ? だから手繋ぎくらい大したことじゃないでしょう」 「大した事あるよ……雲園(くもぞの)さんより先に手を繋ぎたかったのに…ていうか繋がせたくなかった」  元音がブツブツとそう文句を言い出すと、雲園は深いため息を吐いて呆れた眼差しでこちらを見据えてくる。 「あの、ブツブツ言いたいのはこっちなんですけど。先輩は好きでいてもいい権利あるんだからいいじゃないですか。好きでいるのを否定されたらもう未来はないんですよ。私はもう好きでいられないんです。手繋ぎなんて何の意味もありません。先輩が落ち込んでいる内容はくだらなすぎます」 「結構引きずってるじゃん」  雲園の言葉にそう返してやると、彼女は物凄い形相で睨んでくる。だがそんな視線で怯むような元音ではない。ライバルなのだからギスギスするのはまあそうだろう。 「もう帰ってくれます? 私早く前に進みたいんで、もう先輩とも話したくないです」 「うん、分かった」  雲園は額に手を当てながら疲れ切った顔でそう口にする。  元音も確認したい事は済んでいたのでそのまま素直に彼女の教室を後にした。元音は教室を離れてから自身の教室へと向かい始める。  そうして、自分が朝礼から教室にいなかった為遅刻扱いになっている事を教室に着いてから教師に知らされるのであった。
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