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* * *
土曜日に告白をした。大好きな一つ上の先輩に。
告白の返事は予測できる内容だった。
予測できたから目を輝かせて次の一手を打った。だがその後の言葉はあまりにも想定外で、正直、頭が混乱した。
『ごめんな、俺の事は諦めてくれ』
『えっ……?』
今すぐじゃなくていい、好きになってもらえたら嬉しい。これからも好きでいたい。振られてすぐに雲園が放った言葉だ。
しかし目の前にいる意中の相手――久土和ははっきりと、諦めてくれとそう言ったのだ。
雲園の思い描いていた未来が一瞬で崩され、頭に黒いモヤがかかり始める。
計算をミスってしまったのだろうか。何か不快な言葉を言ってしまったのだろうか。
いや、今日一日の自分は完璧な乙女さを全面に出せていた筈である。
『好きでい続けるの、ダメなんですか?』
雲園は納得がいかず問いかけた。すると久土和は更に衝撃的な言葉を繰り出してきたのだ。
『そういうのは平ちゃん限定なんだ』
(…………え)
『何だかな、あの子の好意はすげえ気持ちいいんだよな。だからごめんな、気持ちはすげえ嬉しかったよ。けど振られても俺の事を好きでいてくれるのは平ちゃんだけがいい』
なんであの女だけはいいのだろう。
納得がいかなくて仕方がなかった。
平気で他人を尾行する気持ち悪い女。全く尊敬もできない一つ上の先輩。好きなのにマネージャーになる覚悟もない恋愛脳。
客観的な視点からして顔も自分の方が絶対に可愛いと言える。妄信的にただ久土和を好きなだけで、あの女の好意の何がいいのか全く分からなかった。
でもこんな言葉を言われてしまっては、もう何も言えることなどない。
諦めてくれと言われて諦めないのはそれこそストーカーだ。
雲園は鉄平元音のようなストーカー女にはなりたくなかった。久土和を諦めたくなどなかったが、彼に否定されて、諦めざるを得なかったのだ。
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