第二十九話『ライバルの退場』

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久土和(くどわ)元音(もとね)が来ないの気にしてたの?」  すると美苗(しえ)が唐突にそんな問いかけを彼に繰り出す。  元音は美苗の質問にドキドキしながら久土和の回答を待った。美苗がこんな質問をするとは予想外だが、それはもうとてつもなく気になる内容である。 「おう。平ちゃんがいねえとは思わなかったからな」 (ええええ〜〜〜っ!!?) 「えっじゃあ元音が来て嬉しい?」  更に続けて話を聞いていた可菜良(かなら)が質問を繰り出してくる。 「そりゃ言うまでもなく嬉しいだろ! 平ちゃんに何もなくて良かったぜ」  久土和は何の迷いもなく笑いながらそう答えると、そのタイミングで久土和を呼ぶ友人らの声に応答してから「じゃ、またな!」と笑顔でその場を立ち去っていく。  元音は久土和の喜びしか感じられない発言に顔を真っ赤にさせ口元をにやけさせながら、美苗の三度目チョップが繰り出されるまで表情筋を締めることができなかったのであった。  いやはや、美苗と可菜良の質問にはナイスという以外の言葉が見つからなかったのは言うまでもない。
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