第二十九話『ライバルの退場』

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 着替えの為、一旦久土和(くどわ)と別れた元音(もとね)は駆け足で雲園(くもぞの)のいる体育館へ向かうと、彼女を見つけるや否や問いただすようにそんな言葉を向けていた。雲園はうんざりしたような顔で元音の質問に声を発する。 「辞めませんよ。なんで辞めなきゃいけないんですか」 「まさかまだ諦めないってこと!? 考え直したってこと!!?」  動揺しまくっていた元音は詰め寄るように雲園に質問をぶつけていく。  だが雲園は元音の質問に強い口調で「諦めるって言った事を撤回はしません」と言い切ったのだ。  疑いたくなる元音も流石にその言葉に彼女の嘘偽りないものを感じ取り、雲園を黙って見返す。 「あのですね、振られたからじゃあマネやめますってそんな無責任な事私がすると思いますか? 先輩ならするんでしょうけど、私はマネは続けます。久土和先輩はもう関係ありません」 「ふうん……諦めるって決まったらわたしなら辞めるけど、辞めないんだ」 「だから無責任な事私はしないんですよ。先輩とは違うんです」  そう言って雲園はフンと鼻を鳴らす。まあ彼女が部活を辞めないという選択肢に元音が文句を言うのはお門違いなのだが、元ライバルが諦めた事は信じられても久土和のそばにいるというのは面白くはない。そう、面白くないのだ。 「面白くないって言われても私の人生なんで、先輩に言われる筋合いないです」 「まあそりゃそうだよね」 「て言うかですね……はあ、もう言っちゃいますけど」 「何さ」
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