第三話『口実とやり取り』

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『おう! よろしくな!!』  久土和(くどわ)から返事が届いたのは元音(もとね)が家に着いてから数十分後の事だった。  彼はスタンプもなく、ただその一言だけを送り返してきていたが、それがまた久土和勝旺(かつお)という人間らしく元音の心は弾んでいた。  それから元音がすぐに『そういえば今日は部活なかったの?』と返してみる。ここでやり取りが途切れるのは寂しかったからだ。  それに運よく良い話題も浮かんでいた為、元音は返信時間の間隔を意識することもせずすぐにこうしてレインを送り返していた。 『そうそう! 昨日と今日は休みだったんだよ、二日連チャンで休みってのも珍しいんだけどな!』 (わたし今久土和くんとレインのやり取りしてる〜〜〜!!!!!)  久土和のレスポンスはそれから早かった。  それ以降も思いついた話題を元音の方から次々と放つと、久土和は無視することなく返事を律儀に返してくれていた。  約一時間程経ってから彼の返事が来なくなり、時間帯からして恐らく寝落ちしてしまったのだろう。 (一時間もレインしたとか……夢?)  元音は返事が来なくなっても彼との何の変哲もないやり取りを何度も眺め、全ての履歴をスクショする。  そうしてアルバムにそのスクショをまとめ、自分だけが見れるよう鍵をかけていた。元音の口元は上がり、幸せな気分で布団に頭をつける。 (嬉しすぎて眠くない!!!!! 今日は夜更かしかな!?)  気分が高まったままの元音はそれからも眠れることなく、ようやく朝の四時頃に眠気が来ると終始眺め続けていた久土和とのやり取りを虚ろな目で見返しながら眠りにつくのであった。
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