21人が本棚に入れています
本棚に追加
元音がいつも久土和に首っ丈であることを斉藤は短い付き合いでも理解してくれていた。
途中、体育館に入ってきた雲園と目が合ったが、彼女はすぐに顔を逸らす。
雲園は宣言通り本当に部活を辞めずほぼ毎日マネージャー活動に勤しんでいるようだ。まあ久土和への熱を諦めたので、元音にとって気にするところはない話だ。
そんな事を頭の隅で思いながらそのまま斉藤と話を続けていると、お目当ての久土和が体育館の扉を開け、こちらに声を掛けてくれる。
「平ちゃん! 今日も楽しんでくれな!」
「ありがとう久土和くんっ! 今日も大好きっ!」
「はははっサンキューな!」
元音のいつもの愛情表現に久土和は明るい笑顔を見せながら手を振ってウォーミングアップを始める。
元音は本日も満足の時間だと幸福さを噛み締めながら久土和の姿を見守っていると、先程まで会話をしていた斉藤に声を掛けられた。
彼女は元音に話し掛けてから自身の腕時計に視線を落とし、こちらに視線を戻す。
「ねえ鉄平さん、五分だけちょっといい? 話したい事があるの」
「? はいっ何でしょう?」
最初のコメントを投稿しよう!