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斉藤がやけに改まった様子でそう言ってくるので、元音は不思議な気分になりつつも彼女に声を返す。
すると斉藤はここでは言いにくい話なのだと口にし、元音を体育館の外へ連れ出した。
まだ柔道部の活動まで少し時間があるから問題はないようだが、一体何の話だろうか。
元音は見当もつかないまま、斉藤の後についていき、人気のないエリアで斉藤はここにしようと口を開く。
「あの、斉藤先輩どうしましたか? 何か悩みでもあるんですか?」
あまりにも不思議だった元音はそんな言葉を投げかけてみる。
斉藤にはいつも良くしてもらっているので、何か力になれる事があるのなら自分も手伝いたい。そう思っての発言であったが、斉藤は目を見開きながら「違う違う、私は何もないよ」と全力で否定してきた。
「それならよかったですっ! それで、改まって話っていうのは?」
「うん、ちょっと……大分お節介な話になっちゃうんだけど」
少し話しづらそうにして胸元の体操着が皺になるほどキュッと服を握りしめた彼女は、元音に視線を向けながら小さく口を開いた。
「あのね、久土和君に好きっていうの…やめた方がいいと思う」
「…えっ」
瞬間、元音の目は大きく見開かれた。斉藤の口からこのような言葉が出るとは全く考えもつかなかったのだ。だが斉藤は驚いた元音に対しすぐにまた口を開いて言葉を続けた。
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