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斉藤のアピールは周りにも伝わるほどのもので、もしかしたら迷惑かもしれないと流石に斉藤も考えたのだと口にする。
その為彼に直接確認をしたのだが、男子の意見はノーであった。迷惑ではないとはっきりそう言われたのだそうだ。
「それがすごく嬉しくてさ、そこから更にアピールするようになっちゃって」
斉藤は少し恥ずかしそうに髪の毛を触りながらそう告げる。しかし、本人から迷惑ではないと容認されてからの斉藤はそれ以降、毎日のように彼に好きだと想いを告げるようになっていったようだ。
「もう気持ちは伝わってるし、好きって事あるごとに言っちゃっててね。『また明日ね! 今日も好き』とかね」
だがある日突然、意中の男子に呼び出された斉藤は彼に言われてしまったのだという。もうやめてほしいのだと。
はっきりと、非難するような目で斉藤を見た彼は心から迷惑そうにそう口に出したのだと斉藤は寂しそうに教えてくれた。
「鉄平さんも毎日好きって言うのは久土和君も公認って言ってたけど、やっぱり……数が重なる事で相手が嫌になっちゃう場合があると思うんだ……」
斉藤はそう言って元音の方を見据えてきた。
「だからね、久土和君がいくら優しくて寛容的な人でも、人間だからもしかしたら鉄平さんがあたしの二の舞になっちゃうんじゃないかって心配なの。余計なお世話なのは本当に分かってるんだけど、鉄平さん見てたら他人事に思えなかったんだよね。昔のあたしと重ねちゃってさ」
斉藤の気持ちはよく伝わってきた。
彼女にそのような過去があった事も驚いたのだが、元音の姿を見て心配してくれた斉藤の気持ちは素直に有難く思う。
斉藤はきっと本心から元音の事を思ってこの助言をしてくれているのだろう。
だが、久土和への態度を改める事に関しては簡単に決断できそうになかった。
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