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「先輩、心配してくれてありがとうございますっ過去の辛い事話す程気にしてくれて凄くありがたいですっ」
元音は斉藤に小さく頭を下げてお礼を告げる。そして「でも」と口にして言葉を続けた。
「本当にこれから好きって言わない方がいいんでしょうか……確かに久土和くんが嫌な事はしたくないし嫌われたくないです、でも…わたし、久土和くんへのアピールをやめるのは不安です」
久土和に迷惑をかけるのは絶対的に避けたい。
しかし久土和本人から嫌だと言われてない以上は彼への想いを伝え続けたいのが元音の気持ちだ。
今日だって久土和は楽しそうに元音の好きを受け入れてくれていたし、彼の様子に変化は見られないのだ。
斉藤が好きになった相手はそうだったかもしれないが、久土和もそうとは限らないだろう。それを斉藤に伝えると、彼女は頷きながらも言葉を続けてくる。
「確かに久土和君は違うかもしれないよね。だけどこれから先も同じとは言い切れないよね? もしあたしの時みたいに、久土和君が否定するようになっちゃったらって思うと、怖くない? 今ならまだ久土和君に嫌がられる事なくチャンスがくるかもしれないし、好きって言うのをやめてアピールを減らすだけで、諦めるわけじゃないから、あたしはそっちの方がいいんじゃないかなと思うな」
斉藤はそう口にしてからごめんねとこちらに謝罪してくる。
口を出しすぎだと自覚しているのだろう。
正直、斉藤の助言がなければもう気にすることもなかったであろう懸念点なのだが、それでも彼女が過去の自分に重ねた元音を案じてくれているのは素直に嬉しかった。
しかし、彼女の意見を鵜呑みにするべきか否か元音は分からずにいた。
確かに久土和が元音の好意に嫌気がさした後では、今後の久土和との発展は難しいだろう。
だがだからと言って石橋を叩いて渡るようなやり方は元音の性格には合っていない。
「わたし、久土和くんに直接聞いてみますっ」
「えっ」
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