第三十一話『久土和の思い』

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 少し頭を俯かせながら、上目遣いで彼に問う。久土和(くどわ)は迷う暇もなく「おう! 勿論だ!」とそう安心の言葉を返してくれていた。  元音(もとね)はそれにホッと胸を撫で下ろしながら次の言葉を口にする。 「良かったっありがとうっ! でもあのね、もしかしたらこの先、わたしの気持ちが久土和くんに負担をかけちゃうんじゃないかってちょっと考えてて……だから久土和くんに好きって言う回数は、もう少し減らした方がいいのかなとか色々考えちゃって……やっぱり、久土和くんから聞いて決めたいなって思ったの」 「今の久土和くんはいいって思ってくれてるのは凄く嬉しいんだけど、いつか、久土和くんも予想できないくらい、わたしの気持ちが負担になるかもしれないって、ある人に助言してもらって……久土和くんの迷惑にはなりたくないから…この先も今までみたいにたくさん話し掛けていいのか、もう少し控えた方がいいのか、久土和くんの気持ちを聞きたいんだっ」  元音の言葉は静かな裏庭でよく響いていた。  懸念点を全て伝え終えた元音は、心臓が爆発しそうなほど鳴り響く自身の胸の前に両手を握る。手には汗が滲み出し、ごくりと唾を飲み込んだ。  緊張感が走る元音はだが逃げるわけにはいかず、彼が答えてくれるのを待つ。  久土和の答えは分からないが、それでもこの選択は正しいのだと、怖い思いを抱きながら元音は彼の回答を待っていた――。
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