第三十二話『カップルになった翌日』

2/9
前へ
/251ページ
次へ
 昨晩は寝付けなかった。  まさかのまさかが起きて元音(もとね)の心臓は勝旺(かつお)と別れてからも高鳴り続けていたのだ。  勝旺は昨日、元音を家の前まで送ってくれていた。嬉しくて帰り際もう一回キスをすると、勝旺はほのかに顔を赤らめながらこちらの頬を触り、笑顔で踵を返したのだ。最高の帰り道だった。 「まじか、クド、鉄平(てつひら)なんかと付き合ったんかよ……」 「鉄平の片思いで絶対終わると思ってた」 「ストーカーみたいな女でいいのか?」  外野が何やらうるさいが、元音は全く気にしない。誰が何を言おうと、勝旺と自分は付き合っているのだ。これが現実なのだ。 「おいおい、元音ちゃんを悪く言うのは許さねえぞ、元音ちゃんに謝れよな」 「大丈夫だよ勝旺くんっ! 勝旺くんが彼氏になってくれた事が幸せすぎて全然気にならないからっえへへ」  友人であろうと間違った事を正そうとしてくれる勝旺の姿が純粋に嬉しい。元音は勝旺に本心を告げて彼の腕を引くと、勝旺はこちらを優しく見下ろしながら嬉しい言葉を口にしてきた。 「元音ちゃん可愛いこと言うよな」  勝旺はそう言って元音の頭を撫でてくる。それを見ているクラスメイトは更に騒がしくなり、そのまま元音の手を美苗(しえ)が引っ張った。 「あんた、一体何があったの?」 「そうだよ元音〜聞いてないぞ〜」 「ごめんごめんっ! 付き合ったの昨日の夜だから、興奮して報告どころじゃなくてっ」
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加