第三十二話『カップルになった翌日』

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 元音(もとね)はえへへと言いながら美苗(しえ)可菜良(かなら)に連れられ、座席へと誘導される。  勝旺(かつお)の方をチラリと見ると、彼はこちらに楽しそうに手を振りながら友人らに囲まれ始めていた。皆、何があったのか聞きたくて仕方がないといった様子だ。 (手振ってもらっちゃったっ好きっ)  ニマニマした顔を全面的に出した元音は美苗(しえ)からのチョップを食らい、昨晩の詳しい説明を催促された。  元音は緩み切った頬を戻すこともできないまま満足な顔で二人に昨日の出来事を話し始める。  柔道部のマネージャーである斉藤(さいとう)に好きを伝えるのを止めた方がいいと助言された事。  そしてそれを勝旺に直接聞いてみることにした事。  部活終わりに勝旺を裏庭に呼び出して聞いてみた事。  結果、勝旺から予想外に愛の告白をされた事。  思いが通じ合って恋人になった事。 「マジか……元音にも予想外だったんだ」 「ええ〜そんな少女漫画みたいな展開あるんだねってかマネの先輩ナイスすぎないっ!? ものすごい恋のキューピットだ〜!」 「えへへ、だよねっ! わたしも今日お礼言いにいこうと思って!」  そう、斉藤の助言がなければきっと勝旺が昨日元音に告白をしてくれることはなかった。  彼も元音に相談されて、自分の思いに気付いたのだと帰り際にそう口にしていたからだ。  勝旺の話を聞くに、時間の問題で勝旺と恋人になれていただろうとは思うが、それでもこんなにも早く勝旺と彼氏彼女の関係になれたことは斉藤のおかげとしか思えない。  斉藤としてはそのような展開を予想していなかっただろうが、元音にとって彼女は可菜良の言う通り恋のキューピットのような存在になっていた。
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