第三十二話『カップルになった翌日』

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「おめでとうとか言わねえからな」  休み時間、廊下から教室に戻ろうとしていた時不意に金堂(こんどう)に話し掛けられる。  元音(もとね)は金堂の方に視線を向けると「いらないから」と普段通りの口調で言いながら胸の前で不要のジェスチャーをする。そうしてそのまま教室に入って行った。  中に入ると、こちらに気付いた空名(くな)が元音の方へ足を向けており「もっちゃんおめでとう!」と元音の肩をポンポンと叩いてくれる。  空名は良かったねと言いながら元音に祝福の言葉を口にし、こちらが感謝の声を返すと満足したのか自席へと戻っていった。空名の事だ。きっとスマホのゲームで休み時間を過ごしたいのだろう。 「元音ちゃん」  大好きな勝旺(かつお)に名を呼ばれる。  付き合ってすぐに呼び名を変えられる関係にうっとりとしてしまう。  世界で一番好きな王子様に『元音ちゃん』と呼ばれる日が来るこの状況は、自分が最高にお姫様になっている気分だ。 「勝旺くんっ」  元音はすかさず勝旺の元へ飛んでいくと、そのまま彼に距離をつめ、休み時間が終わるまで幸福な会話を交わすのであった。
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