第三話『口実とやり取り』

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 そう、元音(もとね)は友人の恋バナを聞くのが大好きだ。  関わりのない者の色恋話には全く興味のかけらもないのだが、大好きな友人達の幸せそうな胸キュンエピソードは元音にとって嬉しい事であった。 「そだそだ! この間デートした時の話まだしてなかったよね?」  すると目の前で恋バナを迫られた可菜良(かなら)は、元音の前のめりな姿勢を咎めることなくそう言って先日起こった恋人とのエピソードを話してくれていた。  可菜良の恋人は一個上の先輩だ。二人は付き合い始めてもう一年になると聞いている。  元音が可菜良と仲良くなったのはこの学年に入ってからなので、こちらが可菜良と話すようになった時には既にその恋人と付き合っていた。  そして美苗(しえ)にも恋人がいる。彼女は恋多き女であり、今の恋人とはまだ付き合って二ヶ月くらいであった。  美苗とは入学式の時からの友人であるが、この一年二ヶ月の間で美苗には元彼が五人存在している。  ただ美苗自身が好きな相手がコロコロ変わる自分に悩んでいる様子は全くなく、彼女は毎日楽しそうだ。これまで付き合ってきた元彼達とも揉めて別れる事はなく、円満的に別れて今でもすれ違えば挨拶くらいは交わすのだという。  二人の恋バナを順番に聞いていた元音はあまりの萌えエピソードに顔を赤く染め上げ、幸せそうな二人の話を終始真剣に聞いていた。
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