第三十二話『カップルになった翌日』

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 放課後になると、元音(もとね)勝旺(かつお)と共に部活へ向かう。    二日連続で見学に行くのは控えようと思っていた元音であるが、それでも勝旺と初めての放課後デートをしたかった元音は彼の部活が終わるまで校内にいようと考えていた。  放課後デートと言っても学生の身分である元音達が夜遅くまでどこかで遊びまわるわけにはいかない。まあ元音としては勝旺と二人ならば体裁を気にせずどんなところでも嬉しいのだが、勝旺の性格がそれを選ばないだろう。  健全な時間に元音を家まで送り届け、そのまま翌日の学校へ備える。それが勝旺という王子様なのだ。 (勝旺くん……かっこいいっ)  目からハートが飛び出そうな元音は、終始勝旺を見上げながら足を進めていた。勝旺はそれに気付いているのか元音に度々視線を向け「どうしたんだ?」と声を掛けてくる。 「勝旺くんがかっこいいから見てるんだっえへへ」  そう言って彼の手に自身の手を繋げると、勝旺は優しくがっしりと逞しい手で握り返してくれる。なんて、最高の瞬間だろう。 「そうか、照れちまうな」  勝旺がそう言ってくる為、もう鼓動の音がうるさくって仕方なかった。  彼の方を見上げると勝旺は笑ってはいるものの、本当に照れた様子で自身の首筋をさすっている。  そうしてそんな勝旺と目が合うと照れながらも彼はニカッと太陽のような笑みを見せてくれるのだ。勝旺が愛おしくて仕方がない。
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