第三十二話『カップルになった翌日』

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「だいすきっ」 「俺もだ」  そんなラブラブなやり取りを交わしながら、柔道部がいつも利用している部室の別館への入り口に辿り着く。  そこで勝旺(かつお)元音(もとね)の手をそっと離しながら「また後でな、元音ちゃん。いつも見学、ほんとありがとな!」と言って元音の頭を撫でてきた。  元音は勝旺の部活姿が見たいからこちらこそありがとうだよっと笑顔で伝えると、彼は嬉しそうに笑い声を上げ、こんな言葉を繰り出したのだ。 「ずっと元音ちゃんを連れて歩きてえな」 「ヘッ!!?!?」  勝旺は確かにそう口にした。今、元音とずっと一緒にいたいと彼は確実にそう言ったのだ。  一時的にでも離れ難いを思ってくれているのが伝わり、絶叫したくなるほどの嬉しさが込み上げた元音はもう胸がいっぱいいっぱいである。  勝旺は「部活の後も楽しもうな!」と言いながら別館の中に入って行った。彼の背中が見えなくなるまで見送った元音は、体を反転させると駆け足で体育館へ向かうのだった。
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