第三十二話『カップルになった翌日』

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「えっ!!? 付き合う事になった…の!!?」  体育館についてすぐ、いの一番に斉藤(さいとう)に話しかけた元音(もとね)は彼女を体育館の外へ連れ出し、昨日の一連の出来事の報告をしていた。  斉藤は想定通り目を見開き、信じ難いものを見るような目でこちらを見つめていた。反対に元音は緩んだ頬を更に緩ませながら「はいっそうなんですっ」と肯定の言葉を返す。 「そうなんだ……ごめん、すごく驚いちゃって……そんな展開になるとは思わなかったけど、凄い朗報だね! おめでとう鉄平さん」  斉藤は驚きつつも元音の報告を心から祝してくれた。斉藤自身も、まさか昨日の今日でこのような展開が生まれるとは夢にも思わなかった事だろう。元音は斉藤にしっかり向き合いながら大きく頭を下げた。 「ありがとうございますっ斉藤先輩のおかげで勝旺(かつお)くんと付き合えることになりましたっ! えへへ、昨日から本当に最高の気分なんです」  そう言ってから顔を上げてもう一度彼女に笑いかける。元音の幸福さを感じ取ったのか斉藤は「本当におめでとう」と口にし、再び口を開いた。 「本当に良かった。ていうか、もう下の名前で呼んでるの?」 「えへへ、そうなんですっ勝旺くんも『元音ちゃん』って呼んでくれるんですよっ」 「えっそうなの!!? わ〜めっちゃ青春」  斉藤とそんな話でしばし盛り上がり、部員達が集まり始める時間になると二人で体育館へ戻っていく。体育館へ戻ったすぐ先で目が合ったのはかつてライバルだった雲園(くもぞの)だ。 「お話聞こえました。でも別にもうお二人の事なんて気にしてませんから」
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