第三十二話『カップルになった翌日』

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 強がりに聞こえる雲園(くもぞの)の言葉だが、しかし彼女は本当に気にしていないのかもしれない。いや、気にされていたら困るというものだ。  勝旺(かつお)への未練があったら、気が気ではいられない。  だが雲園の性格から見て、本当に勝旺への想いは既に切り捨てているように感じられていた。  元音(もとね)は「うん、未練あったらすごく困る」と率直に声を発すると、彼女は心底嫌そうな顔をしながらこちらを睨んでくる。 「先輩ってほんと! 性格悪いですよねっ!! 見学も二日連続でくるし!! 邪魔だけはしないでください!!!」 「勝旺くんの見学の邪魔なんてしないよっ見てるだけで幸せだから」 「惚気(のろけ)ですかっ!? ほんとムカツク!」 「付き合いたてほやほやだし」 「今だけですよ! 私の方が幸せになるんで!!」 「大丈夫、勝旺くんがいる限りわたしの幸せは永久だから」  元音がそう返すと、もう雲園はこれでもかという程のげんなりした顔を見せ、元音の元から立ち去っていく。  元音は離脱する雲園の背中を見送る事なくすぐに勝旺へ視線を向け、愛おしい彼氏の部活動姿を目を輝かせながら拝むのであった。
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