最終話『王子と姫』

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最終話『王子と姫』

 勝旺(かつお)との付き合って初めてのデートはもはや言わずもがな、最高に幸せな一日であった。  まずは勝旺が元音(もとね)の家までわざわざ迎えに来てくれ、それだけで幸せだったのだが、なんと彼は両親に挨拶までしてくれたのだ。  元音は両親への挨拶は恥ずかしくて仕方がなかったのだが、勝旺の気持ちが嬉しかった。  偶然休みだった母と父は元音に彼氏が出来たことに心底驚愕した様子であったが、勝旺の陽パワーを気に入ってくれたのかやけに楽しそうに会話をしてくれていた。  まさか付き合ってすぐのデートで両親に挨拶をするとは思いもしなかったが、正直嬉しくて堪らなかった。  そして、勝旺と一緒に有名な水族館へ行くと、二人で気になった魚から順路を気にせず鑑賞をしていた。  イルカショーの座席では一番前に腰掛け、水飛沫を存分に浴びながら二人で笑い合う時間は最高にデートしている気分を味わえていた。  イルカやオットセイの可愛さはショーを見ることでよく理解できていたが、それでも元音の隣に座る大好きな勝旺の笑顔が何よりも可愛らしく愛おしいと、そんな事も考えながら元音はイルカショーを楽しんでいた。  そうして休憩でお昼を食べ終えてから一緒にソフトクリームを頼み、それぞれ違う種類のアイスを選んでいた元音は勝旺とアイスの食べ合いっこも実践できていた。そして元音はその時、リベンジもしていたのだ。  そう、修学旅行の時には出来なかった『あーん』である。  元音は控えめな姿勢で勝旺にあーんをしてもいいか尋ねてみたのだ。勿論、勝旺が本当に嫌な行為であれば、潔く諦める心で問いかけていた。
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