最終話『王子と姫』

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「あっ捺実(なつみ)ちゃん」 「あ、鉄平(てつひら)ちゃん。何、私の事下の方で呼んでんの?」  勝旺(かつお)と付き合ってから二週間が経過していた。  最高に気分のいい日が継続している元音は、廊下で偶然勝旺の元カノである捺実を見つける。 「勝旺くんがそう呼んでたからそう呼ぶようになっちゃった」  元音がそう彼女に声を返すと、捺実は察したのか話題を変えてくる。 「えっ何もしかして勝旺と付き合った?」 「大正解っ! 付き合って二週間だよっえへへ」  元音が『久土和(くどわ)くん』呼びではなく『勝旺くん』呼びに変わっている事に気付いた捺実にそう言ってブイサインを作ると、捺実の表情は先程より明るくなっていく。 「えっマジか〜!! なんか嬉しいんだけど! 良かったね! おめでと!!」  元カノにおめでとうと言われるのもなんだか面白い構図だ。  普通なら嫌がるだろうが、しかし元音は純粋に捺実の祝福の言葉が嬉しかった。捺実には勝旺への未練がないのを明確に分かっているからである。 「ありがとっ! ねえ捺実ちゃんは例の人とどうなったの?」 「宣言通り夏休みに告ってもらえて、付き合ってるよ」 「わ〜〜〜っやったね!!!」  まるで仲の良い女子会だ。  勝旺との恋愛経験がある捺実とこうして話をすることはこの先もうないだろうが、それでも彼女と恋バナをする時間はなんだか楽しかった。  元音は数分の間彼女としばらく立ち話を続けると、お互い幸せになろうという言葉を最後に手を振り別れるのであった。
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